ここでひとつ、冬のあいだに見てきたことをまとめてみようかと思っている。 お題は、「冬の台所」。 食糧事情が一般的に厳しいと思われる冬のこの季節を、鳥たちはどう過ごしているのか。 人間とのかかわりにも着目しつつ、見てゆきたいと思う。

まずは、ここであろう。 冬の水鳥たちに餌を与えるのは、あちこちで行われている行為であろうな。 予のよく訪れるこの潟湖では、多くの人々が餌を持って訪れ、その種類は穀物類だけでなく蛤や蟹などの魚介も含まれておる。 定期的にかつ個人的に餌やりに訪れている人たちも、どうやら何人かおるようである。 日本では半作業的に水鳥に餌付け作業が行われているところも多いが、ここでは少し事情が違うようだな。
さて、この潟湖で人々から食料を得ている鳥たちを紹介してみよう。 水鳥では、左にある真鴨、アメリカ緋鳥、尾長鴨をはじめ、
瘤鵠、四十雀雁などが主賓のようである。 一羽だけ居着いている灰色雁も、人のはこんでくる食料に依存しているのではなかろうか。 そのほかに、
姫羽白、頬白鴨、小鈴鴨も集まってくる。 採餌のたびにもぐるので、効率はすこぶる悪そうであるが…。 基本的に肉食のこれら潜水鴨たちが集まってくるのは、人々が魚介類も分け与えておるからであろう。 そしてそこには当然、鴎たちが殺到してくる。 鷲鴎が主で、ほかにアメリカ大背黒鴎も見られるし、カナダ鴎もおこぼれに預かっておるようだ。 ほかには、土鳩、
姫小嘴鴉、
羽衣鴉、
照椋鳥牴牾が辺りをうろうろ。
黒京女鷸や浜鷸もよく見かけるが、これらも盗み食いに訪れているやもしれぬな。

人とのかかわりといったら、次はこれであろうか? もっとも、日本のように"ごみステーション"なるものはここにはなく、あまり烏が群がっているといった風景は記憶がない(アラスカのフェアバンクスでは、渡鴉が群がっておったな)。 決まった日に家々のまえに出されたごみ入れには、たいてい蓋があるので、そこから得るのは難しいかと思う。 がしかし、いつも蓋があるわけではないので、多少は厄介になっているのであろうな。 左の残像は鷲鴎と姫小嘴鴉で、体のおおきい鷲鴎に烏は太刀打ちできない様子である。 しかし、つかむのに適していない鴎のあの肢では、ビニールのうえは辛いらしく、つつき破ろうと頭を下げては、滑り落ちていた。 烏の方が、分がありそうである。

芝のうえに群がる烏や鴎は、そこに住まう
蚯蚓が目当て。 あちこちで地面をついばむ姿をよく見かける。 とくに、雨などで地表がしめると蚯蚓は地表へ這い出すので、ねらい時である。 予のねぐらのすぐ近くにある公園では毎朝、夜が白むと同時に鴎が集まってきて、朝食を採っていた。 しかし、あるよく晴れた、霜の降りるほど寒い朝に訪れたときは、鴎はおらなんだ。 凍った地面では蚯蚓も期待できないということか。 なんにせよ、蚯蚓は彼らの重要な蛋白源であることは確かであろうな。
芝に集まる鳥は、なにも蚯蚓だけが目的ではなかろう。 黒雁や四十雀雁をよく見かけるが、彼らは基本的に植物食性なので、きっと何がしかの草かその根を食んでおると見受ける。 星椋鳥などは、やはり蚯蚓ねらいであろうな。

忘れてはならぬのが、休耕地である。 先ほどの芝で紹介した烏や鴎、椋鳥などは当然、蚯蚓などを狙って頻繁に訪れる。 左の残像は渡鴉で、ここバンクーバー島では比較的人との距離を保っている彼らも、畑地は利用しているようである。 今まで紹介した場所で登場する鴎は、ほとんど鷲鴎、なかにはアメリカ大背黒鴎が混じっている程度であるが、畑では鴎(Mew Gull) もよく見かける。 二尾千鳥を見ることもあるが、畑地には蚯蚓のほかにもよい蛋白源があるのやもしれぬな。
ぬかるんだり水浸しになった場所では、水鳥も多く集まる。 よく見かけるのが、真鴨、アメリカ緋鳥、四十雀雁、鳴鵠である。 落穂や籾殻、葉や根の切れ端など、食料は豊富である。

道路や道路わきも、鳥たちにとってはお気に入りの採餌場所である。 路上に転がる獣の骸など、烏たちにとってはお手軽なファーストフードであろうか。 冬に限らずとも、烏たちにとって道路の巡回は、いまや欠かせない日課であろう。
さて、路上を見上げると、街燈にとまる鷹をよく見かける。 赤尾
鵟である。 狩人である彼らの狙いは、道路わきの地面に住まう、野鼠などの小動物。 きっと、非常に都合のよい位置、高さ、肌触りなのであろう。 "路上の街燈に鵟"として、すでに予の中では方程式が出来上がっておる。 それほどよく見かけるのである。

ここまで長々とお付き合いいただきありがたく存ずる。 最後にひとつ、問題提起を。 街燈に、鴎である。 よくみる光景だな。 しかし、この鴎たちは、いったい何をしておるのだ? 鵟とおなじように獲物を探しているのやもしれぬが、どうもそんなふうにも見えない。 ただボーっとしているだけのような…。 これは、現在のところ予にとって謎のひとつになっておる。 もしご存知の方がおられれば、ご一筆下され。 予想としての意見も大歓迎である。
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